一念凡生 · 我本頑痴 · 50 / 102
六州歌頭・天の外の天

山中の歳月、半生の狂おしさを遥かに思う。剣を抜いてゆく、川船の灯は広く散る。異郷を歩き、石に臥す暮らしを味わい、幾重にも曲がる川や沢へ踏み込む。松濤は響き、砂石は熱く、星々は明るい。連なる峰を渡れば、月は霜のよう。猿の影が跡を追い、虹を含む雨が雲の波を巻き上げ、綿毛と葉が舞う。帆を掛けて千万里、夢うつつに幼い日の寝床を語る。何もかも広々と、茫々と散る。
去るも留まるも限りなく、心を平らにして譲る。天の外を望めば、まさに清涼。孤独な客は己を放ち、長い世を忘れる。因はもっともと思えても、果は扱いがたい。今は高みへ登り、仙境の住まいに寄り添い、玉の香りを引き寄せる。しばし風が吹き、仙樹の実が降る。紫泉のそば、牢関を踏み破り、大道へ心は帰り向かう。八方で私に伴い、人の世の勘定は投げ捨て、朝陽を待って立つ。寒蝉は切々と鳴く。
語釈——
江火:川船に灯る明かり。
掛席:帆を掛けること。
無量:制限がなく、果てしないこと。
琅玕:仙樹の実。
紫泉:仙人が飲む泉の水。
牢関:禅宗の三関の一つ。初関は道を悟ること、重関は道を修めること、牢関は道を証すること。
螀[jiāng]:寒蝉。
*本作品は光之十一のオリジナルです。転載の際は原作者名を明記してください。権利侵害が判明した場合は、法的責任を追及します。挿絵はインターネットより引用したもので、著作権は原画作者のPaperblueに帰属します。