一念凡生 · 我本頑痴 · 09 / 102
喜長新・相思に病む

金鴨の香炉は沸きたち、紅の薄絹を枕にする。黛の筆は妖しくたわむ。壎と篪の合奏に楽しみは寡く、高まりを賤しむ。情を移し、蝋を刻んで辛苦する。
笑いを装い、薄く嗔って郎の意をいなし、良き宵を荒れ廃れさせる。空の樽と枯れ葉に蟏蛸をひねり、玉の屑もみな寂として、逃れがたい。
注釈——
金鴨:鴨の形をした香炉。金属を鋳て作る;
紅綃:紅い薄絹;
壎篪[けんち]:壎も篪もいずれも古代の楽器で、二つを合奏すると音がたがいに和する;
刻蝋:古人は蝋燭に目盛りを刻んで時を計ったと伝えられる;
佯[よう]:装う、見せかける;
嗔[しん]:怒る、恨みごとを言う;
蟏蛸[しょうしょう]:蜘蛛の一種。体が細長い暗褐色の蜘蛛で、脚がとても長く、多くは室内の壁のあいだに網を張る。その網は八卦に似ていると考えられ、喜びのしるし、吉兆の前触れとされた;
碎瓊:玉の屑。
*本作は創作です。転載の際は原作者・光之十一を明記してください。権利侵害があった場合、発見しだい必ず法的責任を追及します。なお、挿絵はインターネットより引用したもので、原画師・何何舞に帰属します。